2023日本ダービー2番人気スキルヴィングの急死で注目された競走馬の闇と希望

みなさんこんにちは。
先日5月28日に行われた2023年度日本ダービーで2番人気スキルヴィングが17着後に倒れ、心不全による予後不良となる出来事がありました。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=tXQOvxdcHBoより

スキルヴィングはJRAのG2の重賞である青葉賞を獲り、今回の日本ダービーでは期待された馬でした。騎乗した騎手であるルメールをはじめ、各地で競馬ファンなどがその死を悼む声が報じられました。
その反面、元地方騎手であった競馬予想家の瀧川寿希也さんによるツイッターのつぶやきが物議を醸しました。こちら

「なんでお前ら金かける対象にして人間のエゴで博打の駒にして死んだら悲しんでるの じゃあレースに出すの辞めさせろよ」
「競走馬に産まれた段階で可哀想なんだよ もっと可哀想な馬はたくさんいるんだよ 勝てない牡馬なんてすぐ動物の餌(肉) 乗馬クラブに行けばご飯全然もらえずお客さんを危ない目にあわせない為にガリガリにして余生を幸せに暮らせるのは出世した馬だけそーゆー現実を理解してほしい」

と怒りを露わにしたツイートを投稿しました。

世間では「ひどい」「悲しいことなのに何が悪いのか」とその発言にたいし批判するなど物議を醸しました。
言葉は過激ですが、地方騎手として競馬に携わってきた瀧川さんだからこその競馬界の現実に対するいら立ちが言葉として表れたのだと思いました。
それが一体どういうことなのか調べてみました。おつきあいください。

年間、生まれた頭数以上に登録抹消される競走馬の現実

農林水産省がホームページで公開している資料『馬産地をめぐる情勢』によると国内生産馬の8割は競走馬であるサラブレットといわれております。

出典:農林水産省『馬産地をめぐる情勢』より

こちら提示しているのは2019年末の在籍登録数20,261頭ですが、2020年では10,004頭(中央:5,302頭、地方:4,702頭)が登録抹消されております。実に登録された半数の数です。
10,004頭抹消事由の内訳は、
再登録3,875頭(中央→地方:3,498頭、地方→中央:377頭)(39%)、
乗馬2,473頭(中央:877頭、地方:1,596頭)で25%、
繁殖1,097頭(中央:614頭、地方:483頭)で11%。
へい死976頭で10%
(競走馬の場合、心臓発作や感染症等により突然死亡することを指し預保不良とは異なる)
研究17頭の0.2%
その他1566頭の15%
中央から地方競馬への再登録以外の馬と繁殖馬、へい死、研究以外の乗馬とその他の馬4039頭
その他と用途がはっきりされていないのは、おそらく屠畜され食用目的に転用される馬をさしていると思われます。

乗馬は乗馬クラブに移されるので問題ないのでは?と思われるかもしれませんが、数年で食用に転用されるための施設に移されるとのことが大部分であることが調べていくと見えてきます。
以前もお伝えしておりますが、全国乗馬倶楽部振興協会所属の乗馬クラブ全国で所在する270箇所からみても、毎年引退する馬の数や維持費を考えても乗馬に向かなかったり年老いて乗馬に適さないため食用に用途変更されるのは数字からも見えてきます。
2021年競走馬の生産頭数は7,731頭。
毎年生まれていく命に比例して、それと同等かそれ以上の数が登録抹消されております。

こうした面からもサラブレッドが寿命を全うできる馬はほとんど難しく、生存をかけた文字通り生き残るための厳しい状況であるのがわかると思います。
競馬に対しての批判はあるものの、国の一財源としても巨大な産業となった競馬。
なぜこのような流れになってしまったのでしょうか?

畜産業としての競馬

出典:農林水産省『馬産地をめぐる情勢』より

出典:農林水産省『馬産地をめぐる情勢』より

競走馬となるべく育成されますが、競走馬の一生は上記のような流れです。
牧場誕生
仔別れ生産牧場(0歳8月~9月)
トレーニングセンター(1-2歳)
厩舎に入厩(2歳春)
競走馬デビュー(3歳)
引退
種馬
牝馬
種馬も、繫殖牝馬も年齢により、繁殖ができなくなった場合『用途変更』とされます。
2019年に制作の競走馬の現実を追いかけたドキュメンタリー『今日もどこかで馬が生まれる』で瀧川さんと同じように厳しい言葉をインタビューで答えたのは、競馬の生産地で競走馬になる前の1-2歳時で競走馬として調教する生産者の言葉です。

生まれてすぐに、厳しい訓練をさせることにかわいそうだ批判に対しこう答えます。
競走馬として、故障したり結果を出せない馬は肉になってします。そのほうがはるかに不幸ですよ。すぐに折れてしまったり、厳しい競争に耐えれない馬は作っちゃいけないんですよ。

馬は経済動物といわれておりますが、1ヶ月の餌代は1頭当たり25万円。結果を出せない牧場にとっても費用がかさみ経営が成り立たなくなれば、馬を処分するといわれているのが経済動物といわれるだけあります。
中央で登録抹消された馬は、地方競馬に転属になるケースが多いですが結果をだせない馬は乗馬クラブに移されます。

ちなみに昨年から取り上げているヨシオ。昨年5月に競走馬を引退しました。

OP重賞とるのみの馬でしたが、京都アイドルホースで優勝しぬいぐるみになるほどの功績もあって馬事公苑での誘導馬になるための訓練をしております。

出典:netkeibaより

出典:netkeibaより

ヨシオのケースは稀で、ほとんどの競走馬で結果が出せない場合よほどのことがなければ乗馬クラブなどで引き取られることも稀です。

年齢を全うして生きられる馬はG1制覇しているような馬で種馬や繁殖馬になれたとしても、年齢でその用途がなせなくなった場合、『用途変更』となり処分される可能性が高まります。そんな厳しい競走馬の過酷な現実がありますが、基本的に農林水産省や競馬界で現状を根本的に解決する姿勢は正直なところ消極的に見えます。もはや、国家の一財政をになっているとも過言でもない巨大なマーケットとなってしまった競馬界に闇ともいえるかもしれません。冒頭の競馬予想家の瀧川さんの激しい非難は、競馬に携わった厳しい現実を知る故にだからこそだったのではないでしょうか。

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